イオンクレジットのアジア進出


途上国の経済発展にともなって、

ほぼ確実に拡大する市場があるときに、

どのタイミングで出るか。


クレジットカード事業は、

ネットワーク外部性的な要素があることから、

先行者メリットがあると思いますが、

一方で、

先行者ゆえの、

その国の消費者の貸し倒れリスクの見極め(=適切な利率の設定)

の難しさがあります。


どの事業にも

早期に参入するメリットとデメリットがありますが、

事業の特性上、面白い事例だと思います。

海外進出当初はイオンの総合スーパー(当時はジャスコ)を利用する顧客に、利便性向上の一環で割賦販売サービスを提供していた。92年のタイ進出時、現地でクレジットカードはおろか、割賦販売すら普及していなかった。当然、競合他社もいない。「経済が発展すればクレジット需要も伸びる」。この判断を基に、93年にイオン店舗以外のサービス開始を決めた。

 しかし日本とタイでは文化や商慣習が大きく異なり、日本の手法をそのまま導入しては貸し倒れの山を築く。損失を低く抑えるため、まず家電や家具などの日系小売業者数社に限定してサービスを開始。貸倒比率など現地消費者のサンプルデータを収集した。

 当時のタイでは現金払いが一般的で、毎月一定額を支払う感覚に乏しい。また銀行口座や自宅電話などが少なく本人確認が難しいなどの違いも分かった。

 このデータを基に、銀行口座などを持たない利用者でも勤め先の会社で確認が取れれば分割払いを認めた。また現地の収入規制でクレジットカードが発行できない個人に対しても、蓄積したデータを生かして与信判断し取引を増やした。

 こうした営業戦略で加盟店舗を現地企業にも広げ、現在ではタイ国内のクレジットカード発行枚数(約1300万枚)のうち、約15%を同社が握る大手となった。分割払い限定のカードなど、他社にないサービスも展開。香港などアジアのその他の地域でも数%から10%弱のシェアを獲得している。

 親会社のイオンは14年2月期までの中期計画で、アジアを収益拡大地域と位置付ける。「(イオンクレが)将来の小売事業進出に先行し、イオンブランドを浸透させられる」(イオンの岡田元也社長)。イオングループ全体のアジア戦略の先兵との期待も大きい。
 課題は営業地域の拡大と収益安定のバランスをいかにとるか。ベトナムでは10年度上期の加盟店が230店と前期末に比べ2割増えたが、システム対応などで上期の損益は赤字。インドやカンボジアには駐在員事務所を設けた段階で、収益貢献はまだ先だ。

出所:2010/12/08 日本経済新聞