米KKRがベトナム食品大手の株取得
米KKRがベトナム食品大手の株取得
米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が、ベトナムの魚醤(ぎょしょう)生産最大手のマサン食品の株式10%を1億5900万ドルで取得する。同国の未公開株式への投資額としては過去最大規模となる。
■新興市場の小規模投資へ
ベトナム経済は過去10年間、年率7%の成長を遂げてきた(3月18日、ハノイの雑貨店)=ロイター
この株式取得は、大手のプライベート・エクイティ・ファンドが、将来の巨額利益を見込んで、債務残高が高くても急速な経済成長を続ける新興市場の小規模投資に関心を持ちだしたことを如実に示している。13日に発表されるマサン食品の株取得はKKRにとり初の対ベトナム投資となる。海外の投資ファンドはこれまで、国有企業の支配的地位や経済の不安定さなどからベトナムへの投資を敬遠する傾向が強かった。
マサン食品は国内の主要民間企業であるマサングループの傘下企業。同グループがホーチミン株式取引所に上場する株式の時価総額はおよそ20億ドルである。
急激なインフレや繰り返される通貨切り下げ、国営造船企業ビナシンの事実上の債務不履行などで、海外投資家のベトナムに対する信頼は揺らいできた。
また膨大な官僚主義的な規制、金融の透明性欠如、慢性的な汚職・腐敗も投資家の足を遠ざけている。
■ベトナム成長「極めて強気」の見通し
こうした障害にもかかわらず、長期的視野に立つ投資家にとっては、ベトナムは魅力的なフロンティア市場であり続けてきた。
過去10年間の経済成長は年率約7%で、アジア開発銀行(ADB)によると同国の中産階級の伸びはアジア地域でもトップクラスだという。
KKRの広報担当者によれば、人口に占める若年層比率の高さ、政府の経済改革実績、国民の生活水準の向上などから、同ファンドがベトナムの経済成長に「極めて強気」の見通しを持ち、「マクロ経済の状況も長期的に見れば正常化し、やがて改善する」と予想しているという。
■調味料最大手、新事業進出も
マサン食品は8700万の人口を抱えるベトナムにはなくてはならない調味料(魚醤)生産の最大手。しょうゆとチリ・ソース生産も国内1位で、主食の即席麺の生産も国内2位だ。
KKRによると、マサン食品は、食品部門から他の製造部門への経営拡大を図っており、国民の所得上昇と都市化という同国の長期的傾向がもたらすであろう恩恵を被るのに最適の位置にあるという。
12月までの1年間の売上高は5兆6900億ドンで、純利益は1兆2530億ドン(6000万ドル)だった。
KKRへの株式売却により、マサングループのマサン食品に対する株式保有比率は86.6%から78%に減少する。
同グループは、タングステンの有数の埋蔵量を擁する北部ヌイ・ファオの鉱山会社の株式の64%、大手民間商業銀行のテクコム銀行の20%の株式も所有している。
過去2年間に投資ファンドから5億ドルの資金調達をおこなった実績もある。
元銀行マンでグループの最高経営責任者(CEO)のマドゥル・マイニ氏は、今後2年間はマサングループにとり「変革期」となると語り、戦略的M&A(合併・買収)に向けて資金を確保していきたいと語った。
出所:日本経済新聞(2011/4/13)
記事の中にもありますが、
株式市場の不安定さに対する忌嫌から、
(債権市場も同様)
2年ほど前のバブル期に不動産等を中心に積極的に投資した企業が、
キャッシュ面で苦しくなっている状況があります。
記事のような動きが増えてくれば、
より活発な企業活動の条件が整ってきます。